記入済みの婚姻届
それを
僕の母と 彼女が役所に届け
僕は新入社員の研修初日
新しい 輝ける船出
のはずだった
突然の電話
彼女の父が 自殺したのだという
真っ暗になる目の前
帰ろうとする僕に彼女は言った
『私は大丈夫 あなたはそこで頑張って』
毎日かける電話
気丈な君はいつも『頑張ってね』
僕は 心をどこかにやったまま
生きるって なんだろうって
死んでしまうって なんだろうって考えながら
25日の研修を 終わらせた
どうして僕はあの時 なにがなんでも帰らなかったんだろう
今も僕は悔やむ時がある
やがて別れてしまった彼女が言った
『あなたは大事なときにいなかったくせに』って
言葉を思い出す時に
矛盾を僕は 正せなかった
終わった後に出る答えに
僕はなにができたろう
一年位たってから
机にしまっていた
その 記入済みの婚姻届を
本当にごめんねって何度も言いながら
僕は焼いた
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