2013/04/30

死に行く蟻と笑い声

踏み潰された蟻が

死に至るまでに動いている間

近くの公園で遊んでいる子供たちの

笑い声がずっと聞こえているとしたら

なんてそれは残酷なんだろう

…そんなことを考えながら

帰りの電車を待っている

2013/04/24

エントロピーも罰も増大し続ける

計量や保存上の利便性のために四角に切られたチーズ
熱に溶けてしまったあとでは
その成形は意味を失う

意味をもつ境界線が存在する事実
必要かどうか
個々によって曖昧に引かれるそれも
必要かどうかの裁判にかけられる

人間は文明や文化を産み
多くの悩みを増やした

目先だけにとらわれた罪によって科せられた罰は
次の世代以降に残された

まるで呪いのように

羽ある小鳥の自由な決断

世界を忘れた小鳥
羽は飛ぶことを久しく止め
時折歩くことくらい

地面からの視点以外の景色はなく
地中から間違って這い出たミミズを食べて生きている

小鳥はだが
それを自由だと言う
空を飛ぶことを自ら止めたのだと
必要ではないと判断したのだと

薄暗さが迫る夕暮れ前
そんな景色を見下ろすことや
地面ではない上を飛んで
水平線をのぞむことを棄てたのだと

小枝にすら上ることのない彼は
跳ねるように歩き
草陰で眠る

自由とは
獲得するものだけではないと
寝言を言いながら

理由なきネガティブな海

なんの理由もなく
僕はネガティブな海に落ちた
真っ暗な海に

すべてのことが
どうでもよくなるぐらいに
ただ沈んでゆくばかり

戸惑うばかりの心
なんとか落ち着かせようと
手探りの努力

死にたくないのに
死んでもいいやなんて
何人もの自分が争う

確かな理由がないというのに
見つけ出せないままだというのに

足掻きながら
時間を稼ぐ

時間が解決するのを期待して

2013/04/23

anyway

実際のところ
良いことも悪いことも
偶然のようにして降りかかってくることが多い

だからといって
普段の行動とそれは切り離して考えるべきだ

大きな誤解に則って普段を運任せにすることは
大きな失敗として後に痛感させられることになるだろう

それは例え
別次元ともいえる突然の出来事に
自分の無力さを感じていても
一緒だ

起床中


遠くで
始発の電車の音が聞こえる
ゆっくり
まだ暗い中
起きようと努力をする

こんな早くに電話したら
きっと驚くだろうなって
寝ぼけてるのに君のこと
考える

でも絶対に
怒られるだろうなって
寝ぼけてるのに君のこと
また考えてたら

遠くで
始発の次のっぽい電車の音が聞こえた

2013/04/20

積み重なる光が朝をつくる


夜明け。

何層もの色が重なって朝になる。

2013/04/18

友情は斯くあるもの

なみなみと注がれていたコーヒーが
半分まで減ったとき
会話は終わった

ほとんど無言で外を眺めていた
残りの半分を飲み干す間
脇の道路を何台の車が通りすぎただろう

数ヵ月会えずにいた時間
僕らは実際
積もる話はなかったのだ

会わずして会わなかった期間
ただ過ぎた日々は
切り取られたように

気持ちの無い再開の約束
具体的な期間はない
会わずして会わず
会うべきときに会うのだろう

関わりというもの
ランダムな周期
必然の疎通

少し手を振り
振り返らず車に乗った

きっと向こうもおなじ




照らされることで

砂浜に一つの山。
夕暮れの赤オレンジの光が照らしている。
そしてその、
山が作る影とのコントラストが僕を惹き付ける。

同じ思いをどこかでいつかした気がしたが、
諦めるまで思い出せなかった。

立ち止まった僕の、
足元からのびる影。

ああこんな風に

心の影が僕から取り出されてしまえばいいのに。


太陽も戸惑う 不愉快な朝

夕方は時間切れ
太陽は退場
やる気のない月が昇ってくる


当たり障りのない風
揺らぐことをさぼる草木
寝付きの悪い鳥

そのあとにやってくる

不愉快な朝

2013/04/17

それぞれのフィルターで

僕はどこに行っても結局は僕なのです
どこに移動したって
先ず居るのは僕

息をのむような景色も
脳がはじけるほどおいしい食事も
疲れてすぐ寝てしまう夜も

道に迷っていらいらしたり
突然の雨に困惑したり
帰りの飛行機が飛ばなくて唖然としたり

それを経験して
どう感じるかのフィルターは
僕自身の人生を経て形作られた
僕だけのもの

同じように
あなたもどこに行こうと結局はあなた
あなたのフィルターを通して
紡ぎ出される人生

2013/04/16

毎朝(えぶりもーにんぐ)

宇宙の果てを想うより
周りの人を想いなさい

同じぐらい
答えのないもの

新聞で世界の流れを知ろうとするより
その新聞紙の向こうの人を知ろうとしなさい

遮られた向こうで
どんな顔をしているかを知りなさい







2013/04/12

透き通るような
じゃあなくて
透き通っている空

風は今日も姿を見せず
僕を通り抜けていく
前髪の動きを気にするのも飽きるぐらい

そして...

太陽!

僕はたくさん歩く

春を吸い込みながら

待っていてくれる人へ想う事 向かっている電車内で想う事

ぼくはあなたに甘えてばかり
自分の思いに任せ遠くへいく僕を
眼の奥の気持ちを隠し許してくれた

誰も知らない土地へってただ
冒険者気取りで

でも
いつも心の中には
あなたを入れて歩いている

それは今の本当のあなたじゃないけれど

どうせ身勝手な考えって分かっている
『あなたがいてくれるから』
って本気で思っていても

一番早い電車で
僕の居たあなたの待つ街へ向かっている
ほんの少しの帰郷

あと何駅だろう

しまっている昔のあなたを
入れ替える時がくる

あなたはどんな顔で
僕を迎えてくれるのだろう

車窓にうつる自分に
問いかける

その向こうに流れる景色

それは

時を遡るかのように

あなたへ還っていくかのように

2013/04/10

それは何気ない朝

悲しみを放り投げた

遠くのゴミ箱に


何時か思い出にできればいい




鳥はさえずり

朝を告げる


まだちょっと重い心と身体を

自分で勇気づけ

起こす

2013/04/09

まちあわせたあなたの


しろいこーと
ぴったりのずぼん

あなたはそれがだいすきで
それをすきなあなたをだいすきで

まちあわせ

しろいこーと
ぴったりのずぼん
そし
とびきりのえがお

ああ

ぼくはあなたをだいすきだ

行き着くはて

たくさんのひとが降りた電車に

また多くの人が乗り込んでいく

扉が閉まり動き出した

冷たい色褪せたプラスチックの椅子に座り

乗り遅れたひとを眺めていた


次の電車が来るころには

いつのまにか列ができていて

また多くの人を連れていく


どこに行けるっていうんだろう

そんなことを考えていると

次の電車が口を開けていた






2013/04/05

下品な誰かに想うこと

誰かの大きな笑い声が
僕を不快する

下品な声をあげる誰か
下品と感じる僕

どっちもどっち?

そんなことはない

周りを気にしない心
きっと持つことのできないままだろうな
誰かの連れも同様に
下品な声と
無駄な拍手が知らせてくれた

相容れない

だからこそ
マナーを持ち互いに気遣いを

同じ人間とは思えない

また
下品な声が響く

遅れて頭痛がやって来た


もぐらの祈り

心をさらけ出している時の
無防備過ぎる状態で
何度深い傷を負ったことだろう

多くは自分自身に問題があった
それは分かっているんだけれど

まるで
光を求めるもぐらが
土から這い出て
太陽の光で自らの目を焼くよう

愚かな行動
醜い姿

でも
もし降り注いでいたものが
柔らかな月の光だったなら
そのもぐらは幸せになれただろうか?

もう一度土をかきわけ
地上を目指すとき

月の光に照らされますように


あなたの笑顔は透き通るようで
声は心地よく耳に入ってくる
優しさは心に染み込んでくるよう

地中で祈る
明日目にする光を想いながら

どうかあなたは
月であってくれますように

2013/04/04

始まり

海から川と

山へ上って行き

そして湧水にたどり着く


僕にとっての湧水って

なんだろうって考えたら

脈略もなくきみの顔が浮かんだ


でもきっと

そういうことなんだろう


そして僕は海へ下る

雨の風景



水溜り

傘をさす人たち

駆け足で車に乗る人


傘もささず笑っている子供

雨宿りをしている猫


僕たちは皆死ぬんです!

誰の目も届かないところから

そっと風に乗ってやってくる


どんなに笑顔のときにも

それが胸を通り抜けると

心のスイッチはオフに


僕はずっと

何も分からない振りで

笑って生きていたいっていうのにな


死ぬってことを受け止めること

果たして人間に必要なんだろうかってさえ思う


やっと忘れた振りができるようになって

笑顔で一日をすごす


街には暖かい日差し

道行く人にも 笑顔


きっとみんな

知らない振りを続けようと

頑張っているんだろうな


2013/04/02

深夜の海の向こうへ投げつけられた歌声

道路を横切って海辺へ向かうと
空気のにおいが急に変わって

潮の香りに包まれた

冷たさも心地よい
何にも遮られずに
まっすぐに向かってくる風

何か歌を歌わずにいられなかった
夜の海辺
波の音に混ざって
語りあっている錯覚

ぼくは
こんな夜中に独り笑っている

叫ぶように歌う

ねえ

僕は今
自然とひとつになっている?

靴の中に入ってくる砂

今は気にせずに歩こう

気がついたら無言で

海の向こうを眺めていた僕だけれど




私は群衆の一人

見たまえ!
この哀れな群衆を

与えられた情報を鵜呑みにして
何かを分かった振り

新聞を毎日隅々まで見たって
世界を見渡せるわけでもないというのに

気の知れた人達の前で酔いに任せた演説
何もかもを批判すればその上に立てる気でいる

滑稽なり!
この無生産な群衆は

ただ消費することに時間を費やし
自分も周りもすり減らしていく

人は皆
死ぬんだよって

他人事には簡単にいえるくせに自分は
惨めな死に様を晒すんだろう

私も 
そうだ




初めと終わり

何も無い真っ暗闇に
突然現れた明かり
闇を押しのけて輝く

どこからかやってくる人
明かりに誘われて
ただ集まり見つめている

いつしか輝きは弱まり
そっと闇の中に消えていくと
人々はまたどこかへ

けれど

何もない真っ暗闇に
突然現れた明かりは
闇を押しのけて輝いていたのだ