2012/12/30

亡き母

何度も財布の中の回数券をみて
お金が足りないって
二つ前のバス停で降りたこともありました

口癖は
『あなたにまでお金のを心配させたくなかった』

でもね

子供ながらにも
あなたを責めたことはありません

怒られて
何度も追いかけられて
泣いて謝るまで
外に締め出されていても



給料日のたび
胃を痛め
自分で働けない身体を呪っていましたね

子供ながらにも
あなたを責めたことはありません

『私だって女なんだから』
一人でつぶやいていたことを思い出した
意味が分かるまで何年たったろう



身体が痛いって
夜歩き回ったり
昼お酒を飲んでいたり

何で少しでも気付かなかったのだろう

お金がないからって
病院にいかなかったあなた
ガンに気付いた頃には
あなたを安らかに死なせることしか出来なかった

お金がないからって
病院に行けないあいだ
僕は遊び回っていた
自分で稼いだお金だったけれど
何も孝行できないまま逝かせてしまうことになった



後悔があるとしたら
ガンで床に伏せたあなたに
会うことを避けたこと

ガンと知らないあなたに
『治ったら家に早く帰りたい』って聞く度
胸が張り裂けそうになって
死に向かっていくあなたを見ることに逃げてしまったこと


死に目にも会えず

死に際にずっと僕を探していたって聞いて
どうしようもない気持ちになった
居たとしても
死んでゆくあなたに何が出来たろうって言い訳をしながら

家族ながらにも距離をとって接していた
誕生日も 死んだ日もろくに覚えていない僕ながらにも
自分を責めずにいられなかった


ありがとう

高校受験の発表日

いたたまれなくなって家の外で待っていたあなたへ


中学生のとき

おとうさんと付き合う前の恋人の話をしていたあなたへ


小学校のとき夫婦喧嘩で睡眠薬も何錠も飲んで

死に掛けたあなたへ



七歳の僕に

何度も何度も『おとうさんとおかあさんどっちがすき?』ってきいてきたあなたへ

そのたび『どっちも』って答えたあとがっかりしていたあなたへ


おかげさまで

お金にも困らずなんとか生きています

人を心から愛せるようになりました
同じ以上の愛を求めるのが難ですが


こう思うのもたまにしかないけれど

・・・ほんとうにいつぶりだろうってくらいだけれど
まあこんな性格分かっていますよね

さようなら

また思い出すときまで

孝行ができたと思ったことは
お葬式で号泣してしまったこと
自分らしくないって思ったけど
あの時ばかりは素直に悲しんだかな

またね おかあさん

愛する人をいつか紹介できたらいいな










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