2013/01/06

君の世界に君がいないところなんて

苔のはえた大小様々な石を

バランスに気を付けて進む

狭かった道が開け

細い水の通り道が現れる

沢蟹は突然の来客に驚き

辺りへ逃げる


ここはもう無人の小川だった頃を失った


手に水の冷たさをのせ

こぼれ落ちる音を静寂に流し込む

ふと目を上にやると

日を遮る木の枝たちに

鳥は飛び乗って遊んでいた

異物に気付いたのか

鳥はいつしか姿を見せなくなっていた


ああ

日常を避け山に身を潜めようとした男よ

君はどこへいったって君を連れていっているのだ

君のいないところなんて

君の世界にはどこにもないのだ






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