2016/06/15

幸せなひと時

しぃ・・・っ

まだきちんと眠っていないから
もう少し音を立てずにいて

小さなネズミの赤ちゃんが
廃墟の穴の空いた壁の向こう
眠りにつこうとしている

車が通る音がする度
母親ネズミは赤ちゃんが起きないか心配する

もういいかな
行ってらっしゃい
気をつけて

明日
早く目を覚ます子供のために
虫を取りに行った父親ネズミ

眠りから覚めないよう
母親ネズミはそっと横で眠る

翌朝

帰ってこない父親ネズミを
壁から少しの距離の
扉の向こうで

猫からかじられた死体を見つけるまでの
ほんのわずかな

幸せだったひと時


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