戦争が起きて
国のために
男が妻を置いて戦いに赴いたとしてその戦いのうちに
命を失ってしまったとして
その国が勝ったとしても
その国が勝ったとしても
男が死んでしまったその国に
妻は何の価値を抱くのだろう
墓に独り
跪き手を合わせる妻に
国は
一体何をしてあげられるのだろう
涙や雨は
今日も
今週も
今月も
今年も
墓を濡らす
涙や雨は
今日も
今週も
今月も
今年も
墓を濡らす
墓は濡れても
心は乾いたまま
形を持たない国は
存在し続ける
形を持たない国は
存在し続ける
富や権力に守られる人と
零れ落ちる命のバランスはいつも歪なまま
夫の形は残っていない
妻の心には大きな穴が開いている
その穴を通る
叫び声のような
嗚咽のような
風の音が聞こえてくる
墓は
手を合わせる人のもの
人は
人を愛す生き物
想い出が
妻をいつまでも縛っていく
やがて
妻が夫の墓に入ったとして
その墓は
一体誰のものになるのだろう
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