2024/11/25

墓は手を合わせる人のためのもの(remastered)

戦争が起きて

国のために
男が妻を置いて戦いに赴いたとして

その戦いのうちに 
命を失ってしまったとして

その国が勝ったとしても

男が死んでしまったその国に
妻は何の価値を抱くのだろう

墓に独り
跪き手を合わせる妻に
国は
一体何をしてあげられるのだろう

涙や雨は

今日も

今週も

今月も

今年も

墓を濡らす

墓は濡れても
心は乾いたまま


形を持たない国は
存在し続ける
富や権力に守られる人と
零れ落ちる命のバランスはいつも歪なまま

夫の形は残っていない
妻の心には大きな穴が開いている
その穴を通る
叫び声のような
嗚咽のような
風の音が聞こえてくる

墓は
手を合わせる人のもの

人は
人を愛す生き物

想い出が
妻をいつまでも縛っていく

やがて

妻が夫の墓に入ったとして
その墓は
一体誰のものになるのだろう





2024/11/21

きれいな石を積み上げて(remastered)

きれいな石を積み上げた

たくさんだったり
少しずつだったり
二人で積み上げた
きれいな

積んでいくほどに
右に左に揺れだして
揺れはどんどん
大きくなって

いつしか倒れて
ばらばらに

倒れた後に残った石は
もう
きれいな色じゃ
なくなっていた

積み上げたときは
あんなに
楽しかったり
嬉しかったりした
想い出の色が
消え去っていた


たくさんたくさん
あの青い空の向こうまで
きれからもずっと
この幸せを積み上げていきたかったんだけど

うまくいかないものだなあ
うまくいくと思っていたんだけどなあ

この散らかった石たちを
どうすれば
いいんだろう

もう一度
積み上げることが
できるのかなあ

座って僕は
途方に暮れる

見上げた
青い空を

睨むように
憧れるように





2024/11/20

花とカモメと生きること(remastered)

こんな世界に
花は咲いて

こんな世界に
カモメが飛んで

こんな世界に
僕は生きている


息をのむような赤  薔薇

青に映える白  カモメ

ただ生きている 僕

picture

ピクチャー

現実から切り取られた画像
過ぎ去っていけないまま
どんどん置いてけぼりになっていく

花もカモメも僕の人生も
切り取ることなんて必要ない

咲き誇って

空を気ままに

大きな声で笑う

僕らはただ
向かっていけばいい

花とカモメと生きること

常に今が
目の前にあるのだから




2024/11/12

牛乳にも負けないカルシウム

牛乳
牛から絞り出した牛乳

本当は
牛の子に飲ませるもの

僕らは大量にそれを飲んでいる

牛さんは
人間のお母さん?

栄養やカルシウムが
豊富なんだって

ひどいよね
人間

牛を飼う
自由を奪って
牛乳を搾り取る

フェアトレードのコーヒーに笑われそうだ

カルシウムって
牛乳以外からも摂取できるってさ

じゃあ

牛さんから絞り出さなくてもいいよね

酪農家さんが必要なくなるくらいの
カルシウムで

誰か
牛さんを助けて!

牛乳を搾らずに済んだのなら

牛さんはどこに
行っちゃうんだろう
放されて
道路とかで会えるのかな

そんなわけないか

色々考えたら
お腹が空いた

今日は
焼肉にでも
行きたいなあ

牛さんは結局
奪われるがわなのかなあ

2024/11/09

希望を口にしよう(remastered)

お金がないとか
暇がないだとか
誰々が嫌いだとか

声に出しても
嫌な気持ちにしかならない言葉を
僕らは使いがちだ

もったいない

嫌な気持ちでいる時間
もっと良い時間にできるはず
出来たはず

僕らは
希望を口にしよう

実現出来ないとしても
少しでも前向きになれたら
その時間
君は無敵

実現出来たら
絶対自信になって
その途端
君は素敵

希望を口にしよう
嫌いを好きにしよう

死すら旅立ち
とまでは言わないけれど

僕らが過ごす人生は
楽しい方がいいに決まっている



2024/11/08

さようなら (remastered)

あなたが

あさおきてすぐに
たべられるように
じゅんびしたあさごはんが
新聞をよみながら
むごんでたべられていく

いってらっしゃいは
いっぽうつうこう

あなたが

しごとからかえってきた
ずっとまってたのに
かえってきたらすぐにテレビ
あなたのためにつくったりょうりが
むごんでへっていく

おやすみをいうまえに
きこえてくるいびき

まいにち
まいにち

まいにち
くりかえし

わたしが
えみをくずさないっていう
みえをはっていた
ことも
きづかなかったでしょう

さようなら

わたしとはなしていたらって
りょうりおいしいねって
いつもありがとうって
いえばよかったって

いってきます
おやすみって
ことばをかわせていたらって
おもっても 

もう 
わたしはいないのよ

せかいにおこるものごとを

新聞やテレビで 
ずっと知り続けていなさい

毎日
音もなく
傷ついていく 
私の心の痛みも
知らなかったくせに

さようなら

無言で私は
この世から消えていきます
新聞かテレビで
私をどうか
見つけて下さいね

2024/11/04

右手に杞憂 左手に握り飯(remastered)

何かにつけ
無意味とか
くだらないとか言うあなたの
狭い心の視界に
侮蔑と同情を覚える

世界はこんなにも変化に富んで
何色もの感動に
満ち溢れているというのに

自分の殻に篭って
丸まったままぶつぶつと
文句を垂れる

貴方のこれからの人生に
杞憂のワインで乾杯を

どんな光も通さない
闇に限りなく近い赤ワイン
渋みからくる
恍惚感
どこかずれた生命の
リズム
伝わらない
言葉

誰とも調和しないままに
人生を終えるあなたに握り飯を

土混じりの生臭い具を
品質の悪い海苔で包んだ握り飯
失敗の味がして
思い上がった自分を
磷付たくなる
重い土台で
這い出さない
ように

ワインと
握り飯
狭い心の視野に囚われた
あなたにはお似合い

明かりも必要ない
小さな小屋で
晩餐なさい









2024/11/02

死にゆく蟻と笑い声( remastered)

公園で踏み潰された蟻が
死に向かってばたばたと動いている間

近くで遊んでいる子供たちの
笑い声がずっと聞こえているとしたら

なんてそれは残酷なことなんだろう 

やがて動きは小さくなり
蟻の命が消えても
子供たちの笑い声は途絶えない

…そんなことを考えながら

帰りの電車を待っている私は
足元を見た