2013/05/12

海岸。猫。幽霊。

砂浜と松林の境目に生きる幽霊は
砂浜をあてもなく歩く猫が好きだ
松林に迷いこんだ犬を遠ざけると
餌もないのに散歩する猫を眺める

彼はかつて何もかも満たされつつ
不自由ない人生を送った後死んだ

気がついたらここに存在していて
何処にも行けない事を後で知った

雲ひとつない青空から降る光線を
空気とおなじように透き通らせる

一面の雨雲から落ちる大粒の滴は
遮られないまま地面に叩きつける

出来る事なんて殆ど失ってしまい
幽霊になった自分を呪うばかりだ

今日も彼は羨ましそうに海を見る

その視線を何も知らない猫が遮る



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