2013/05/31

ねずみだったもの

道路に出たねずみが

轢かれた

真っ暗な顔をして

それを見つめる子供


生活のすぐ脇にある無情

2013/05/12

海岸。猫。幽霊。

砂浜と松林の境目に生きる幽霊は
砂浜をあてもなく歩く猫が好きだ
松林に迷いこんだ犬を遠ざけると
餌もないのに散歩する猫を眺める

彼はかつて何もかも満たされつつ
不自由ない人生を送った後死んだ

気がついたらここに存在していて
何処にも行けない事を後で知った

雲ひとつない青空から降る光線を
空気とおなじように透き通らせる

一面の雨雲から落ちる大粒の滴は
遮られないまま地面に叩きつける

出来る事なんて殆ど失ってしまい
幽霊になった自分を呪うばかりだ

今日も彼は羨ましそうに海を見る

その視線を何も知らない猫が遮る



夜になって始まること

招き猫が今にも粉々にされそうな寂れた店
他人事に思えず陰鬱になる

太陽はいつも地球のどこかを照らしている
僕らはいつも自分の手元にない何かを願っている

きっと
自慢げに本屋に並ぶ
努力が成功に結び付いた物語は
そうでない全ての人たちの心を無慈悲に追い立てる

夕方

これから太陽は僕ではない誰かを照らすのだろう

運命や自分の怠惰さも問わず
思い描いた世界にいないことを
何かのせいにする時間が始まる

2013/05/04

春と秋の間に(ある詩への返歌)

春と秋の間に

僕は何を見るだろう

何層もの過去の想い出の上に

新しい記憶を重ねる時に


あなたが僕のスクリーンに残した

照りつける太陽にも負けない笑顔は

今の僕をただ切りつけるばかり


春の終わりの境界線

踏み越える勇気をください

手に入れられずに今年も

背中を押され越えさせられるのだろうか

2013/05/02

母なる地球が思うこと


母なる地球が思うこと

私はいつもここにいて

あなたのかえりを待つ

貴方が何に変わっても

私は私でありつづける

そうすればいつの日か

私のなかに昔の貴方を

見つける日が来るかも

形を留めていなくても

私は貴方を受けとめる