2012/09/30

ビルの谷間のビルボード

どうしてこんなにも

疲れた顔をしたひとが多いの

にじみ出た というよりは

わかって欲しいためにしているような

そんな顔をして歩いても

誰も気に留めてはくれないというのに


まるで

そう これからも こうやって生きていきます

といったテスティモニー

フレッシュ&ボーンも腐ってしまいそう

人生の手仕舞には早すぎる


前場のなりゆきも

後場でさしねでいきましょう

ヘッジはかけずに

今までの弱気を取り戻すような強気で

もうはまだなり

あなたの人生もきっとそう

株価なんて結局は希望と絶望の現在値

実際は何にも織り込まれてないんだから

2012/09/29

少し目覚めの早い朝に

目が覚めたときにいつも

太陽は昇っていたから 今日の

目覚めの風景 闇の世界はすぐに

夢か現実かを判断する必要があった


時計を見ても

明かりをつけても ...明かりをつける必要があること自体が

明けぬ目覚めを認めさせようとする


冷蔵庫を開け 水分を摂る


少しの留守の間でさえ

ベッドは温もりを失っていた


温まっていくのを感じながら 再度眠りにつく


太陽が昇ってゆくところなんて

何の興味もないことを少し誇りに思いながら

理由

花をめでる気持ちに

理由は必要ない

花がその生を得たことに

理由は必要はない


その花が

いずれしおれて

そして

土に帰ること

それにも理由は必要ない

2012/09/24

ありたい

大切だった人が大切じゃなくなるってことが恐ろしい

大切に思ってくれている人に大切に思われなくなるのとは違って


そうありたいと思う自分でないことが悔しくて

歯がゆいことも多いけれど


それでも足掻いていきたい気持ちは残っている

飛ぶことを止めた鳥のようにはなりたくはないから

眠らない人

眠らない人は夢を見ない

眠ったとしても夢を見ない

いちいち新聞のいう物事の角度を信用しないし

流行りの音楽に無条件に迎合したりしない


世界と自分との境界線を持って

決して泣くことを恥と思わない

想いが風になったなら

優しく吹き付けてくる風

この風のように

誰かを思うその気持ちが 相手に感じさせてくれないものだろうかと

ベンチに座りもの思う

きっと

台風のような風で その人を飛ばしてしまいそうだけど

2012/09/22

おやすみ世界

水路から這い出たカニ

久しぶりに殻から顔を出したヤドカリ


目深にかぶった帽子で 見過ごしてしまう


誰かが泣いている声も

どこからか聞こえる救急車のサイレンも

外に漏れでてしまうほどの音量の

ただ叫んでいるだけの歌で聞こえないでいる



おやすみ、世界

今日が正解じゃなかったとしても

眠いから眠るんだ

別れ

自分にとっての幸せが いったいなにかわからなくなる時 あなたにとっての幸せが 必ずしも一緒じゃないってわかる時 そっと どこかで音が聞こえます それは 心が割れて崩れる音 それは 私が消えてなくなる音 本当に 私が思う私にとっての幸せが あなたにとっての幸せでないのなら 私はいつか近いうち あなたに別れを告げるでしょう きっと大きな後悔を 長く続けるとわかっていても 絶対にその判断が 最良でないとわかっていたとしても そして私は歌うのでしょう 誤りに謝りを添えて 不運の人生を彩る 愚かで愚かな決断を いつもそう 結局は 自分のことしか考えていない 身勝手でどうしようもない人間なんだって

2012/09/20

トマトは言う

大きなトマトはこう言った


瑞々しい私を食べて

少しは元気になりなさい

程よい甘さと酸っぱさが私の取り柄

少しかための外皮のなかの

溢れんばかりのなかみを味わいなさい


体裁を気にせずに 一気に丸かじり

さあ お食べなさい

私が私であるうちに

ガラス越しに見える木に僕は

カウンターから見えるガラス越しの木

いつもの席から見えるそれは

季節に合わせ葉を失っていた


次の次に来る頃には

きっと黄色がかった葉を僕に見せるのだろう


ねえ君

僕はどう変わって見えているかい

それとも何も変わっていないかな


君が四季の君を見せながら成長していくあいだ

僕はいったいどうなっていくのだろうね


ガラス越しのカウンターに座る僕は また来るよって店を出た

飲みかけのお茶のように

冷たかったものでも 熱かったものでも

飲みかけのお茶はなまぬるい


やがて濁って


 捨てられてしまうような 悲しい悲しいなまぬるさ

2012/09/18

渦巻き貝の見つけかた

海から離れて森に行け

木々をすり抜け

草をかき分け

音を聞き分け

奥へ 奥へ


もうこれ以上進めないって思えたら

海へ戻って探しなさい

渦巻き貝の見つけかた


意味のないことが 意味をもつ

それは突然現れて

バッグの底に傷ができて こいつとも長いなってじみじみ そんな 今日という日に スーパーの自動ドアが開くと 眩しい日差し 秋だというのに汗がじっとり そんな 今日という日に ふと虚しくなって じっと動けなくなった そんな自分を自分で同情した 今日という日

きままな味付け

夏の太陽

その強い 日差しを和らげるような 雲になりたい


時には 月の優しい光を 意地悪に遮る雲に


生きるってことはきっと 無味無臭の食材

調理するのは僕ら


うまくもまずくも全て

僕ら次第でかわるし

うまくもまずくも全て

僕らの感じ方なんだ


てなわけで僕は

太陽だけの青空


ちょっと休んで遠くにいっている 気ままな雲になりたい

なんてごちそう

あなたの おはようのメールで目を覚ます

なんてごちそう!


それは

こころの朝ごはん


言葉って 理解って 

お礼の気持ちを 上手くあらわせなくなったとき

人は ありがとうっていう

過ちを犯し 上手く謝れなくなったとき

人は ごめんなさいっていう



相手のつらさや悲しみがわからなくたって

人は たいへんだねっていう

2012/09/16

食卓を囲めますように

炊きたてのごはんのように

つやのあるまっしろな愛は

炊飯器に何日も残ったごはんのように

変色し固くなることもある


ぼくらは、どうだろう


何年も手を繋ぎ いつまでも変わらぬ想い

ぼくの想像では

笑顔の絶えない二人しか浮かばない

だから、いつも願っている


少しでも早く叶ってほしいこと …ぼくの炊いたごはんで


朝の食卓を囲めたらなって

時間と心のベクトルは

秋を感じさせる虫の音に

ぼくはなんとか力を借りて

心を落ち着かせようとする


何が焦らせ

何が虚しくさせるのか


答えはいつも自分の中

分かっているはず

どうして人のせいにばかり


もう虫の音なんかでは

どうしようもないと知って


本当は知っていて

渦巻く胸の中

何が?って自問する

何が渦巻くの?って


そして時間は明け方へと向かう



ぼくの心はどこへ向かうのか

虫の音も 時間も 答えをくれない

ねえどうしたらいいの

誰に?って自問する

誰に訊いているの?って



2012/09/15

横断歩道

犬が鳴いて

その声が聞こえて

考えが途切れる


何を考えていたのかはもう思い出せない

それまでのこと


それまでのこと


親子の愛

差し出される小さな手

受け取る暖かな大きな手

繋がった手と手

心と心が流れ込む

互いに



人が渡る

横断歩道

渡らずに立ち止まって独り考える


車の警笛

突然の大きな音で

考えが途切れる


何を考えていたって思い出す必要は無い

それだけのこと


それだけのこと

差し出された痛み

どんな季節の風が吹こうと

心の何かが動くわけじゃないし

寒くたって 暑くたって

汗をかくかどうかの問題でしかない


四季なんて 一年を勝手に区切っただけ

青春がいつからいつまで決まってないのと同じ

何が何を決めるの?

何かが決めたものを守る義務なんてどこにあるの?


何が本当かどうか考えないまま死んでいくひとは幸せだろうなって

皮肉抜きで思ってしまいそうなほど


夕暮れの 橙がかった赤

胸に響く


悔しいけど


結局は自分もその他大勢

括る枠が少し大きくなるだけで

太陽はぼくの裏側を照らす

小さなこころ、夢の切れ端

くすんできた壁紙

曇りの取れない鏡

ポケットのないズボン

かけることのできないハンガー


みんなおいたまま太陽はぼくの裏側を照らす

自分の命

かけがえのないかげがえのないという言葉

本当はなくたっていいものばかり


自分の命だってそう


意味なんて勝手にあったりなかったりするもの

意味なんて言葉には意味なんてない


自分の命だってそう

目覚め

目を開けると

見たくない現実が襲ってくるようで

私は怖くてたまらない


実際は いつものベッドで 白い天井が見えるだけ

毎日のように続ける 愚かな目覚め

2012/09/13

彩り

木製の家具で揃えられた中に

そっと置かれた陶製の花瓶のように

あなたは私の人生を彩ってくれる

どんな花を飾っても

 …飾らないときでも


ねえ

いつも感謝しているんだ

まだ きちんと言葉には表せていないけど

結局は悩み終わる夜

もうすぐ寒さがやって来て

眠れない暑い夜は去ってしまうのだろうけど

眠れない寒い夜になるだけの話で

どうやら安息はやって来ないようだ


どうしても 安息が欲しいのだと

そう思ってはいないし

そう思う自分を認めたくない


今 自分におかれている状態では

満足出来ていないのは事実



季節の変わり目の

眠れない快適な夜に独りもの思う

2012/09/08

今日という日に

今日という日に

何を残せただろう

不安なときに限って 周りに人はいないけれど


誰を助けてこれたのだろう

いつもそう 被害者のように振る舞うくせに

絶対になにかをなそうとしていない


今日という日に 何を残せただろう

何ができていたのだろう

2012/09/04

わいん

倒れたままのわいん

ビニールからは白か赤かはわからないけれど

まず君を起こすことから始めよう


ビニールごとに立てたわいんは

まだ 白か赤かは分からない


君が何色だったって構わない


倒れたらいつでも

君を起こしてあげるから

2012/09/01

何を考えていたのかも考えたくない夜

扇風機の音

遠くで聞こえる車の音が

何の感情も抱かせずに耳から僕に入って消える


ただベッドに横たわって

ただベッドに横たわっているだけ


携帯の充電のランプ

切れかけだったから赤く光っている


少し寒くなってきたけど

遠いリモコンは遠いままで

何を考えていたかも考えたくない僕は

無駄に時間を使って眠る

深夜にトイレに起きて

ベッドに戻って眠る途中

携帯のランプが緑になっていたのが見えた