こっちを向いている 誰も座ってない椅子
かつて
これに座り勉強をしていた 長く続かずにすぐに寝てたっけ
僕がしてきた努力に比べて まずまずの豊かな人生を送ってこれた
運か自分か周りのお陰かは わかんないけれど
外に出ると 灰色の分厚い雲
雨は降りそうで降らなさそうな 微妙な天気
ちょっと風も出てきたし 傘を持っていこうとした頃
ぱらりと 雨
いいタイミングで傘を広げ 歩く
勢いよく落ちてくる雨を 傘が 弾く
頭の上で 大きな音 不快と言えば不快
そんな中を歩く 音と一緒に 愉快といえば愉快
見慣れた寂れた垢抜けないデザインの駅につき
靴についた泥を落とす
切符を買い ゲートを通り 誰も座っていない椅子に座ると
真っ白な布に インクを落としたように 冷たさが染みてくる
温まって気にならなくなるまでの時間
僕はガムを取り出し 少し噛むと 包んで捨てる
長く口に入れることが出来ない 小さな頃からの変な習性
もったいないって 言われては言い返してたっけ
味が無くなるまで噛むのは 感覚の鈍感さや 貧乏性の露呈だぞ って
たとえそれが 僕を除く皆の意見でも
対等な ひとつづつの事例 多性と希少はイコール それは譲れない
電車が来て 俯いたまま電話をいじる女の人の横の席に座ると
ふと見た窓の外に 少し勢力を取り戻してきた青空
今だ 負けるなと 意味も無く応援
車両を移動してきた 年老いた男性に席を譲り
通り過ぎる風景の中に これからの人生を思う
目的の駅に着き ゲートを越えた
空きの無い椅子の群れを抜け
駅をでるとそこには
頑張って雲に勝利した 一面の青空が広がっていた
0 件のコメント:
コメントを投稿