湧き水
湧いたばかりのぼくはただただ澄んでいた
何もわからないまま旅は始まって
人は個であり群であるって
下る途中で気付かせられながら
何かにぶつかって何かを覚えながら
誰かに出会って誰かと別れながら
時にはゆっくり時にはきゅうに曲がりくねりながら
いつか
海へとたどり着くのだろう
ねえみんな
僕たちのたどり着く海はどんなところなんだろうね
何かが同じで何かが違って
いるのだろうけれど
でも
海であることは変わりないんだろう
もうそろそろこの旅にも疲れたところ
海は近くもある遠くもある
もうすこし
下り続けなくちゃいけないみたいだ
湧き水だったころの澄んだなにかは
もうどこにも残っていないけれど
これまでのすべてが今の自分になっていること
悪くない
まあ
そう思えるだけ
少しはましな人生だったのかな
急に出てくる
過去のクリティカルな出来事
僕の脳
いつまでこんなもの
記憶にしまってんだろう
おどろいた
思い出して
また傷つくだけ
なんのために?
って
良いことより圧倒的に多い
悔しいこと悲しいこと
記憶のシステムは
いつもユーザー想い
どよめいた
ふと口から出てくる
あの時好きだった歌
その頃の記憶が
後から湧いてきてしみじみ
ときめいた?
僕の脳
こんな時にこんなことを
なぜ取り出してくるのだろうって
いらだった!
涙に似た
目から出てくる液体を
流れるままに任せながら
ねえ
僕はなんのために
生まれてきたんだろうね
悔しいこと悲しいこと
もういいよう
楽しいこと嬉しいだけで
過ごしたいよう
そんな都合の良いこと
あるわけないか
都合の悪いことばかり
起きるのにね
だからなんか
死んだ先に
天国を求める人の気持ち
ちょっとわかる
空を見上げる視線
その先には
何を映したらいい?
叶わないことばかり
もう
願いたくないよう
世の中には
成功した人たちの
『夢は叶う』
ばっかり
ねえ
本当に
僕はその人たちと同じ世界に
生きているんでしょうか?
って
本気で考えてしまう
そうだあいつら
『諦めなければ』って
予防線はってらあ
苦笑い
立ち上がって
立ち尽くして
うずくまる
そして浮かぶのは
良い記憶ではない
よね
救いって
手で水を掬うのに似て
多くのものをこぼすけど
一滴でも何か
残ればいいやって気持ち
どうか分かってほしい
そしてまた
人生を歩きます
死んで初めて解放される
記憶を無駄に重ねるために