2016/06/15

幸せなひと時

しぃ・・・っ

まだきちんと眠っていないから
もう少し音を立てずにいて

小さなネズミの赤ちゃんが
廃墟の穴の空いた壁の向こう
眠りにつこうとしている

車が通る音がする度
母親ネズミは赤ちゃんが起きないか心配する

もういいかな
行ってらっしゃい
気をつけて

明日
早く目を覚ます子供のために
虫を取りに行った父親ネズミ

眠りから覚めないよう
母親ネズミはそっと横で眠る

翌朝

帰ってこない父親ネズミを
壁から少しの距離の
扉の向こうで

猫からかじられた死体を見つけるまでの
ほんのわずかな

幸せだったひと時


2016/05/30

太陽に向かって後ろを向いた

太陽に向かった後
後ろを向いて足元を見てみると
太陽と僕とを結ぶ直線上に影ができる

ねえ
君は僕の真似をしているけれど
決して僕だとは誤認しないし
話すこともできないじゃないか

いじわるをして
壁に君を映してみたら
壁に張り付くように
無様な格好になったけれど
君はそれを僕に
やめさせることは出来ない

少しの間眺めて
飽きてしまうと
僕は家路についた

またいつか
暇な時に君で遊んでみようと思う

少し
生きることにつかれた時にでも


その何日か後の週末
特にすることのなかった僕は

太陽に向かった後

後ろを向いた

2016/04/28

月は何も知らず(知っていたとしてもそうとは振る舞わず)のぼる

真っ赤な顔をして真っ赤な嘘

認めない嘘は真実?

嘘の可能性が著しく高い最終確認?

夕焼けがいつの間にか
沈みかけの真っ赤な太陽

陥落するハリボテの薄い嘘
その先は太陽の光無き
真っ暗な夜

月が何も知らずゆっくりとのぼる頃
その冷たくも温かい光は

どんな表情に注がれるのだろう



2016/02/10

宇宙っていうとすぐ はるか遠くを考えてしまう人へ

この宇宙は人が言うには
今でも膨張をしているらしい

そして

膨張する前の空間が何かも
そもそも宇宙の外も中もどうなっているかも分からないらしい

ずっと上に有る空の向こうに
地上から手をのばしているみたい

翻って僕らは
お互いの心の中すらすべて分かるわけではない

分からないことや
できることの限界の多い世界

僕はいくら地球がひっくり返ったって
『願いはきっと叶う』なんて
馬鹿げた事をいうつもりはない

見えないずっと遠くだけじゃなく
僕の手の届く範囲のここだって
宇宙の一部

遠くを見るばかりで
近くを見過ごさないで

たまには空を
見上げるのもいいけれど

2016/01/31

宵闇

宵闇に
潜ませていた暗い思いが
目を光らせている

俺は隠れているけれど
決して何処かへ行ったりはしない
俺がここに居ることを
忘れたふりなんてするんじゃないぞ


朝になると
闇と一緒に居なくなったように見えるが
見えないだけで
また夜には光る目が知らせてくれる

宵闇に
潜ませている暗い思いが
歯を光らせている

俺は動いてはいないけれど
決してこのまま動かないわけではない
俺がここに居ることで
ずっと平穏が続くなんて思うんじゃないぞ




2016/01/17

川辺に座りて

川辺に座り
近くを飛んでいる小さな虫を見て
こんなちっぽけな存在でも
自然の連鎖何かに含まれているんだって関心した

同じ生き物とはいえ
そんな地球の脇役の中の脇役に生まれたことを
少し同情しつつ
結局役割の大きさに関わらず
生命は終わるものなんだよなって
悲しい悟り

同じ人間でも
辿る人生は色々

年代や
国や
種別や
持って生まれた特徴や
生まれた後の境遇
等などで変わるけれど

寿命という砂時計は
さらさらと進んでいく

残った砂の量は誰にも分からない

どんな人生を送っても死んでしまうからこそ
その間は楽しく暮らしていたいって思えた

ふと気付けば
辺りは夕暮れ

耳の近くを
少し不快な羽音を立てて
虫が通りすぎていった





2015/12/31

当たり前?

砂浜は別に
恋人たちの雰囲気を
盛り上げるために出来たわけではないし
さざ波の音は
傷ついた心を癒やすためのものでもない

人間は勝手に思い込んで
いろんなものに役割を与えてきた

太陽は優しさの感情は無いし
月は心を映す鏡でも何でもないんだ

産んでくれたからって
産んだからって
そんなにずっと親子は密接でなくたっていいんだけれど

親子って多数の人にとって
大事な関係であり続けているのが不思議でならない

当たり前ってあんまり
当たり前であり続けるほどの基盤をもたないってことを
皆知らないし
知ろうともしない